捏造とか改竄とか
神戸製鋼の品質改竄は1970年代から行われ、元役員等40人以上が関与していたという。
ただ、正直、驚くような事は全くない。
驚きとしては、何故に捜査を受けるような事態に陥ったか？ということ。
これは、神戸製鋼に限らない。三菱自動車、日産、スバルといった自動車メーカーを含めて然りだ。
まぁ、実際のところは、捜査せざるを得ない状況に、捜査する側が追い込まれたということだろう。捜査しなければ、捜査する側が疑われるから、仕方なく捜査したということ。
捜査しなければ、官民の癒着構造が問題になるというような面倒臭い方向に事態が進むのを防ぐためと言えよう。
結局、このような捜査というのは、内部告発によって内部の不正が暴かれるのが起点。
ただ、日本の企業では、従業員、退職者の生活は、企業の存在が前提だから本来ならば内部告発のような形で不正は露わにならない。それでも内部告発によって不正が暴かれるのは、組織と個人に大きなわだかまりがあったということだろう。その不正の実態を良く知った人間に対する扱いというのが、内部告発ということに繋がったと容易に想像出来る。
日本の企業の構造を考えると、風土的に内部告発で不正が暴かれる事は極めて少ないだろうと言える。構造的に内部不正が口止めされるような構造となっているからだ。
恐らく、殆ど全ての企業が内部告発されると厳しい不正を抱えている。
ただ、企業組織も不正をしたくて不正に手を染めている訳ではないだろう。そして、多くは不正による改竄、捏造があったとしても、それが実質的に被害を及ぼす可能性が少ないものだろう。
本来なら改竄、捏造による不正は不要な筈だが、改竄、捏造せざるを得ない状況に追い込まれたが故の結果に過ぎないのである。
何故に、改竄、捏造等の不正に手を染めなければ無くなったのか？と言えば、それは市場の要求する仕様を実現するために、業界内で繰り広げられてきた過当競争が原因とも言える。
過度なコスト要求、実現不能な性能要求、、、、そのような無理な要求に対して、応えなければ製品やサービスの競争力を失う、、、、そんな厳しい状況の中で、組織を存続させるために仕方なく行ったのが不正の始まりだと言える。
ただ、一度行った不正というのは、以後、殆ど永遠に嘘を続けなければならなくなる。そして、気が付けば、不正自体が一つの業務となり、それを引き継ぐことが常識という概念になってしまう。そして、不正に対する意識で、不正を常識として捉えるようになった組織が、淘汰して消えていくのである。
過去の競争では、国内での競争に勝てば良かったモノだが、現代は同じ業界であっても世界中の企業が競争相手である。そのような状況では、不正を常識化することで真の製品性能、品質を向上させる事自体が困難となる。そうなってくると、新たな競争相手に対して競争すること自体が困難となる。
時代が進めば進む程、捏造や改竄による嘘は隠しきれなくなるモノ。そうなってくれば、最終的には、淘汰されて消滅せざるを得ないのである。
現代の日本の企業が、様々な業界で海外の競争相手に対して劣性に立っているのは、捏造や改竄による不正によって製品やサービスの真の進化を諦めているのが理由とも言える。
製品やサービスの生産活動を行う企業において、利益を上げて組織を成長させるには、市場の要求を満たす製品やサービスを提供し続けなければならない。特に、競争相手が世界中のあらゆる企業組織が相手であるならば、既存の概念や価値観の上に留まったモノでは勝負にならないとも言える。
新しい価値観で新しい製品やサービスを生み出すというのは、口で言う程簡単ではない。一瞬の閃きだけで生まれるモノでもない。閃きは必要だが、専門分野で基礎的な知識をしっかりと身に付け、その世界で長く創造的な活動を行った人間の閃きでなければ、何の役にも立たない。そのような閃きを具現化するには、組織や体制、文化が必要だろう。
短期的、単発的な利益を上げる組織としては、ベンチャーを含め小さな組織体でも可能かもしれないが、長く利益を上げ続ける事が出来る製品やサービスとして生み出すためには、相応の体制や組織が必要であり、それが可能な企業というのは、恐らく、国内には殆ど存在しないような印象である。
様々な企業で、製品開発を行ったり、開発技術の提供で実態を目の当たりにしてきたけど、自分の付き合いのある組織に限ってみても、将来生き残るであろう企業というのは、割合的に多くないように見える。
結構、捏造や改竄は、通常業務として組み込まれて、それを当然として処理している企業の方が多かったりする。一箇所だけでなく、様々な工程において捏造、改竄が日常的に行われており、それ自体がシステマチックに組み込まれている場合が多く、神戸製鋼ではないが、1970年代、1980年代から普通に行われているように見えるものである。