ツインスパーフレームとヘリテイジデザイン
単車のデザインが大きく変わったのは、何か？というと、ツインスパーフレームが登場してからかもしれない。
大昔のスポーツバイクのフレームといえば、ダブルクレードルフレームだ。このダブルクレードルフレームはヘッドパイプをアンダークレードルパイプ、バックボーンパイプで支える構造だけど、バックボーンパイプはヘッドパイプの真後ろから支えていたのが元々のデザイン。このバックボーンパイプを跨ぐように燃料タンクが配置されていた。これが80年代初頭以前のバイクの基本形態である。
Ｚ、ＣＢ、ＧＳＸ、、、、全てのバイクがそうだ。
しかし、1983年に登場したＲＺ２５０Ｒからフレームデザインが変化してきた。
ＲＺ２５０Ｒはスチールパイプのダブルクレードルフレームだけど、ヘッドパイプを支えるパイプが真後ろからではなく、両サイドからループ状の支える構造となっており、ダブルクレードルフレームでもサイドループ構造を採用している。
これは、80年代初頭の市販レーサーＴＺのフレームを範としたデザインだけど、スポーツバイクのフレームデザインの主流となっていく。初期のＲＧ２５０ガンマ、ＧＳＸ−Ｒ４００／７５０／１１００、ＧＰＺ１０００Ｒが同系のフレームであり、このサイドループパイプが、ヘッドパイプとピポット部を直線状に極太の部材に置き換えられて、初期のＴＺＲ２５０（１ＫＴ／２ＸＴ）、ＲＧＶ２５０ガンマ（ＶＪ２１／２２）が該当する。その後、アンダークレードルパイプが消滅してツインスパーフレームに進化していく。
サイドループ式ダブルクレードルフレーム以降と以前を比較すれば、単車のデザインは大きく変化している。燃料タンクがサイドループパイプ、ツインスパーパイプの上に載せられている構造で、フレームパイプがヘッドパイプ上部に繋がる構造故に、燃料タンクの前方が絞られた形状で、幅広のエンジンを搭載するモデルの場合、フレームの横幅が大きく拡がっているために、燃料タンク自体は横に大きく拡がったデザインとなっている。
これは、フルカウルを装備したスーパースポーツ、レーサーレプリカや高速系ツアラーではデザイン的に違和感なく仕上げられているが、カウルを持たないネイキッドモデルでは、カウルレス故のスリムさが表現し辛いものとなる。
最近のネイキッドモデルの多くは、基本はツインスパーフレームのスーパースポーツベースのモデルが多く、どれもがネイキッドの名の如く、カウル付きモデルからカウルを外しただけのようなデザインのモデルが多い。また、先端が薄いタンクとエンジンの間のデザイン状の工夫は、何処のメーカーも殆ど同じでラジエターシュラウドを配置しているパターンである。これを、エクストリーム系デザインとか言ってるけど、見た目的には、何処のメーカーのモデルも差異が無いように見える。
一方で、最近のバイクは、レトロスポーツ、ヘリテイジ、、、、といった表現で昔の名車のデザインをオマージュしたモデルが少なく無い。最大のヒットモデルといえば、近年ならＺ９００ＲＳだろう。このトレンドはゼファーから始まっているけど、最近のモデルは、上述のツインスパーフレームを採用したベースモデルの上にデザインを被せているパターンが多いのだが、昔のデザインを今のツインスパーフレームの車体に表現するのは、なかなか難しいというのが個人的な感想である。
90年代以降、80年代風のネイキッドバイクが数多くリリースされてきたけど、どちらかと言えば、ネイキッドバイク、ヘリテイジモデルで市場に受け入れられてきたのは、車体にツインスパーフレームを使ったモデルを採用指定無いモデルの方が多いように見える。
手間が掛かっても、昔ながらのクレードルフレームであるとか、フレームバックボーンをタンクで覆った構造の車体をベースにしたモデルの方が人気を博しているような気がする。
ゼファーやＷが典型的な例だけど、細心のＺ９００ＲＳでは、専用のスチールフレームで昔ながらのデザインを上手く併せている。
この度登場した新世代のカタナはＧＳＸ−Ｓ１０００をベースにしたスキンチェンジモデルだけど、ツインスパーフレームの上にカタナ風デザインを表現しているけど、幅広のフレームをカバーするカウルを纏ったためか、真正面からみると、オリジナルカタナの鋭利さが失われているような印象である。
昔のクレードルフレームの車体は、細長い車体で前から見ると幅が狭く尖った印象だけど、ツインスパーフレームの車体に再現したモデルは、前から見ると幅広、横から見ると前後に詰まって上下に分厚い印象である。乗車姿勢も鋭さを象徴するようなセパハンから、アップライトな姿勢に変わっている。
果たして、レトロスポーツ、ヘリテイジモデルといった過去の名車をオマージュしたモデルのデザインが、現代のツインスパーの極太の車体の上に表現して成り立つか？市場に受け入れられるか？は実に興味深い。
個人的には、カタナというのは、スリークで鋭利なデザインで再現して欲しかったような気がする。